きらめきおばけ

隣国のきらめく男子たちの虚像を解釈する二次創作

現実と虚構の境界線が融ける時〜ウネちゃんサイン会備忘録〜

※機能性の高いレポにはなりそうにありません。

私は元来、生粋のインドア系ドルオタで、全然接触とか近くで見ることには興味ない、なんなら家から出たくない、つべや高画質DVDを見ながら、いいところだけをひたすら語っていたい、歌詞の意味とか解釈してたい、二次創作してたい、ライブも別に1回行ければ十分、それよりもネットで今日推しがどこにいたか知りたい、そういうタイプのいわゆるキモオタでした。根の出不精もあり、また、私は2次元オタクから2.5次元オタクを少々経由し、そのままいきなりK-POPの沼に落ち、かつ当時高校生で渡韓するお金もなく、彼らが生きた人間で、会えるものだというイメージがあまりついていなかったのです。初めてパシフィコかなんかのKRYコンに行った時は微妙にキュヒョンペンだった(!)のですが、スポットライトの中にいるキュヒョンを見て「生きて動いている…けど、まるで現実味がなく、フィギュアのようだ…」とか思っていた記憶があります。

そんなわけで、基本的にはインドア系キモオタとして、ドームの3階席やアリーナの2階席などから倍率のやたら良い天体観測ができるような双眼鏡で推しだけをバードウォッチングのように観察していたのですが、最近、突如として「至近距離でアイドルを見る」ということの面白み?というか興味深さ?を感じています。至近距離とは具体的にどのくらいの距離かというと、「私の挙動によって、相手の認知に私自身が影響が与えられる距離」のことです。どういうことかというと、アリーナの遠方からどんなに大声で叫んだとしても、アイドルには「アリーナのどっかから俺の名前が呼ばれたな」としか思いません。ところが、韓国のライブのスタンディングの最前で、推しに向かって「キムヒチョルゥゥゥゥゥ」とか叫んだら「あいつ、キチガイなファンだな」ということになります。私が私として、推し様の世界を少しだけ揺らがすこと。これはいわゆる認知厨的発想だと思うのですが、私は決して、推しから認知が欲しいわけではありません。(というかおこがましすぎてそんなこと書くのも怖い。)

そして私としては、推しの世界を揺らがせたいわけでも影響を与えたいわけでもなく、虚構として頭の中にあったものが「私がここでこう動いたら、この人はこう思うかもしれない」という急な現実のラインに引っ張り出された時、私はどういう行動を取るのだろう…?どうして私はそうしてしまうのだろう…?私とアイドルのと向き合い方はなんなんだろう…?ということを、考えてみたい気持ちになっているのです。

(ちなみに今までのマイベスト虚構接触は、シンガポールでセブチの全員とハイタッチをした時です。超異国×ライブが超至近距離×13人で、今となっては夢だったのか現実だったのか頭の中で分からなくなっている。)

 

なんだかんだで2018年8月1日、ウネちゃんのサイン会に参加してきました。基本的にサイン会でも、私なんぞの気持ちの悪い思いをアイドル様方にお聞かせするのも申し訳ない、サインに集中してください…とか思ってしまいがちなのですが、さすがに今回のサイン会はウネちゃんへの感謝も高まりまくっていたため、私も事前に何を伝えようかと色々考えました。

ヒョクさんには、忙しい中全力を尽くしてくれていることをひしひしと感じていたので「SMTのソロダンス、チンチャ格好良かったです。ツアー行きますので頑張ってください。歌詞覚えます(←めっちゃ気にしてたので)」ということを伝えようと思いました。ドンへさんには「ドンへオッパ(←これだけは私の乙女心が言ってみたいと叫んでいた)本当に格好いいです。いつもありがとうございます(感謝)、ジュース飲んで健康でいてください(願望)」ということを伝えようと思いました。1億回くらい同じことを言われているかと思うと申し訳ないけれども、別に変わったこととか言えないし、爪痕残したいとかも思わないので、率直な思いを言葉にするとこのようなものになります。一応韓国語でも用意して、でも本人たちが日本語で話したがるだろうと思ったので英語と日本語混じりでいいだろうか…などと思案しながら、いざサイン会へ。

 

まず今回は名前を平仮名とローマ字、どちらで書いてもらえるか選べました。どう考えても、ローマ字にしたほうが本人たちは楽でしょう。しかし、韓国アイドルたちの書く間違った平仮名などが大好きな私は迷わず平仮名を選択。強欲なオタクの性が垣間見えます。順番が近づくにつれ、ウネちゃん達の顔がくっきりと見えてきました。ファンの方が話しかけたことに対して、楽しそうにレスしたり、笑っているウネちゃん達を見て純粋に感動して少し涙が出る。あと、初対面?なのに急に色々なことを韓国語などを交えながらコミュニケーションできるオタクの皆様方の圧倒的なコミュ力に敬服したりしていました。ちなみに、余談ですがヒョクさんは話が長く?、ドンへさんは比較的あっさり?終わっていたので、ヒョクちゃんのところでペンが詰まってドンへさんがお手すきになって変顔などをたくさんしていました。かわいい。

そして、順番が近づいてくると、ヒョクさんの横顔が肉眼でくっきりと確認できるようになります。通路を挟んだ隣の席の憧れの男の子の横顔を盗み見るがごとき快感(ずっと女子校だったので知らんが)に震える。このへんの距離になれば、もう私が奇声を発したりすれば、ヒョクさんが「なんだこのオタクは」とお思いになる距離になります。

そしていきなりスタッフさんに「はいどうぞ」とか言われて、ヒョクさんの前に誘導されます。ヒョクさんは前のめりぎみに座っており、私を見上げて目がくっきり合いました。私が「こんにちは…」と消え入りそうな声で言いかけるといきなり被せて「コンバンハァ〜」と言われて(まじで時制を考えた正しい日本語的挨拶…)と私もネイティブ日本人として「こんばんは」と挨拶しました。すぐに私の平仮名の名前を見て「……な?」とかモゴモゴ言っており、難しい名前(なのか?)でゴメンと思いながら、「◯◯です!」と名前を自己申告すると「アァ〜」と書いてくれました。かわいい。そして、SMTの話などをしたいと思いつつ、人が何かを書いている時に相変わらず話しかけることができない私。なんていうか、アイドルに対して人間として自我をぶつけることが全くできない。目の前にいながら、いつものパソコンの中の推しと私の関係性を持ち出してしまう。結局無言のまま書き終わるのを待ち、最後に何かを伝えなければと思い握手しながら「応援してます!」とだけ言うと、「ずっと応援してください」としっかり目を見て言われました。

なんていうか、この言い方が、すごく言い慣れているんだけど、本心から私に対してそう思っているような感じのする(あくまで感じがするだけ)言い方で、改めて感動した。そのあたりがヒョクさんの本当にすごいところだと思いました。全部、本当に心の底から思っていることのように見える。これは私、トゥギにも感じていて、トゥギの「いつもありがとうございます」も、すごく言い慣れているんだけどもの凄く真剣で真摯に私個人に言っているような感じがして心を打たれる。これはアイドルとしての圧倒的な力だと思いました。全然話せなくても、この一言をもらっただけで一生応援したいと思う、言葉と目に魔法の力が宿っている感じがする。まじでドプロだなと思いました。

 

その感動もつかの間、すぐにドンへさんのところに流される。顔がマジで綺麗だ…とか思っていると、スッと紙を受け取って、ちょっと鼻歌とか歌っちゃいそうな雰囲気で淡々とサインを書くドンへさん。とてもじゃないが、ドンへオッパとか呼べない(コミュ障)。するとドンへさんがサインを書きながら(全員に聞いていたようですが)「チュア、きますか?」と訊いてくれました。自分から話しかけずに、アイドルに気を遣って話しかけていただくとかまじで申し訳なさすぎて、すかさず「行きます!」と答える私。「どこ?」と訊かれたので「東京全部行きます!(会話が成立している…涙)」と答えると「ああ〜じぇんぶ」とサッと笑顔をお見せいただき、そのまま握手していただきました。ドンへさんには「ありがとうございます…ありがとうございます…」と気持ち悪い感じで感謝を伝え、去り際に手を振ったら、手を差し出してくれ、ハイタをしてくれました。かわいい。オッパと呼べなかったことだけが心残り。

ドンへさんは一挙手一投足がまじで自然な男で感動した。座り方とかも背もたれに寄りかかっていてすごくラフで、本当に思ったことを思ったように言い、本当に普段からこういう風にメンバーやスタッフさんとも喋っているんだろうな…と思わせる何か……。私に対しても「ああ、ファンね」みたいなファン向け対応ではなく、ひとりの人間として扱われているような何か……(幻想)。私見ですが、どのグループでも「彼氏」とか「リアコ」と呼ばれるタイプのアイドルにはこの特性が備わってますね。普段感というか、取り繕っていない感というか、もの凄く格好いいのに隣にすぐにいてくれそうな感じ。

ちなみに私、ドンへさんには前に、手渡しの際にポストカードを差し出され、「ありがとうございます」と受け取ろうとしたらヒョイと手の届かないところまで上げられて、「えっ?」と思って顔を見たらニヤっと笑われて「ゴメンゴメン…」みたいな感じで渡されたことがあります。なんかファンカムかなんかでメンバーにもやっているところを見たので、よくやる癖なんだとは思うのですが、いたいけなファンの心を完全に弄んでおり、本当に恐ろしいと思いました。どう行動したら人にどういう影響を与えられるのか、熟知している。天然とか言われているけど、完全に狙っている人だと思いました。というより、天然の中に、天性の鋭さが同居しているところがドンへさんの魅力だなと感じます。これ、高校生のドンへペンとかだったら人生が狂ってしまうところだった。20代で適当に金を積んでいるオタクだったから人生が狂わずに済んで良かった。

 

で、私は結局サイン会では言いたいことを何も言えないし、アイドルの前に立つとただただ小さい声で「いつも…ありがとうございます…」と伝わらない謎の感謝を言うだけマンになるということを改めて感じて、一体私はオタ活で何をしたいんだろう…という謎の哲学タイムに突入しました。結局、現実の距離感になろうが、アイドルの前で人間として存在することはできない。ハイタだろうが握手だろうがいつもこれだし、なんならあまり目とか見てない。現実と虚構の境界線が融けたときにどうしていいか分からず、結局パソコンの前にいるような謎の反応をしてしまう。

そんな時、私がケーポがすきなのは、圧倒的な虚構だからなのだということを痛感します。言語・文化の壁という靄がそこにあるから、なんて言っているのか正確なニュアンスは分からない。なんなら、一人称すら「俺」なのか「オレ」なのか「おれ」なのか「僕」なのか「自分」なのか分からず、みんな想像の中の推しの一人称を作り上げる。日本人の芸能人を見ていると「あ〜この子はこういう子だな」とか、言葉の隅々から推察してしまいますが(それも推察の域を出ないが)、ケーポはもっと推察の自由度が高い。キャラクターとかめちゃくちゃ捻じ曲げて解釈することも可能です。ある種の二次創作の成立条件が低すぎて、それが虚像としてあまりに居心地が良さすぎて、結局ケーポから離れられないんだなあ。私にとってアイドルとは自己と超越の問題であり、自分から切り離された虚像との向き合い方の問題である。 

で、そんな私が接触系イベントに行く意味とは?とか思ってしまうのですが結局また何かあれば積む未来が見えます。まあアイドルの皆さんのご飯代になるなら喜んで積みましょう、それも人生。