きらめきおばけ

隣国のきらめく男子たちの虚像を解釈する二次創作

f(x)が見せてくれた女子校的世界〜女の子のためのアイドル〜

レッドベルベットがこの夏、すごくよかったですね。というか去年くらいからもうめちゃくちゃにいいですね。しかし、今年のK-CONとSMTで改めてつくづくと、いいな〜と思いました。可愛いのに媚びてないところがシンプルに素敵ですごい。今って可愛い・モテジャンルにはTWICEがいるし、媚びてないのはBLACK PINKがいるしっつーかそのへんはYGが伝家の宝刀的にやってくれるので放っておけばよくて、その隙間を縫うものすごいバランス感覚だな〜とか思います。女を可愛いに転ばせすぎないところに、SMの世界に進出したいポリコレ的な部分まで深読みしてしまうくらいです。(それが相変わらず天然なのか作戦なのかが読み取れないSM信者)

そして、レッドベルベットちゃん達の活躍を見るたびに、私の脳裏にはずっと姉グループであるf(x)の存在が浮かんでは消え、浮かんでは消えていました。私は結構真剣にf(x)のことが好きだったことがあり、というか、人生で好きになったほぼ唯一のヨドルがエプであり、f(x)には感慨と尊敬、そして懐かしさを感じていました。もちろんナムドルほどは粘着していませんでしたが、f(x)というグループが持っていたある種の可能性や希望、普遍性には未だに心が動かされます。というわけで今日はちょっとf(x)の事を書きたいと思います。

エプを最優先でガチ追いしていたわけではない茶の間ペンですので、理解が甘いところも多々あると思いますが、あくまで個人的な私のf(x)への気持ちですのでご理解ください。あと、私はかなりソルリペンだったため、ソルリ脱退?後の動向はあまり把握できていません。

 

f(x)がデビューした2009年、少女時代は本当にすごかったですね。圧倒的な王道・モテ・愛され。同じスタイルの女の子達が同じ服装で同じ振りをするという完璧な統一SM帝国(ちなみに私はもちろん敬虔なSM信者としてGenie大好き芸人です)。そして、SMエンタの伝家の宝刀は、直近の先輩グループと対照的なコンセプトを打ち出すということで、少女時代の反動であるf(x)にはとにかく多様性が負荷されていました。長くなっちゃうし重くなっちゃうので比較で動画引用しませんが、Chocolate Kissがまずやばい。この比較については本当に何時間でも話したいことがある。同じように才能があって魅力がある女の子たちにここまで異なる役割を付与してしまうアイドル本当に怖いし、グループの色は演出でどうとでも操作できるんだと思った。

で、とにかく多様性を担わされたf(x)ですが、そもそも国籍が多様の極み。グループ名の通り、xに何を代入するか問題なんですよね。何を代入しようか本当にワクワクする。メンバーカラーも本当に違った方向を向いていて、圧倒的美貌を誇る長姉ビクトリア、ユニセックスなアンバー、どこからどう見てもSMエンタの女性タレント王道のルナ、ジェシカの妹というヨドル血統書付きの美女クリスタル、そして個性爆発のソルリ。衣装も違えば振りもパートごとに別れており、それぞれ謎の個人ショットがある。

 

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ラチャタはも〜〜〜〜うガシガシ踊らせてて最高ですね。どう考えても少女時代のヒールや衣装などではできない振り。歌詞も「まあとにかく人生最高だしみんな楽しもうぜ」みたいな感じで全く恋愛色がない。そして何度見ても、アンバーの存在が鍵。このこのMVのラストで、アンバーが車のドアをあけて他メンバーをエスコートするシーンがあるのですが(そういう消費の仕方はどうなんだという議論はおいておいて)このシーンを見て私は本当にドガーーーーーーーンと強い衝撃を受けました。もはやこれは、外部の男を必要としていないグループではないか、と。グループの外に男がいて、彼らに媚びたり愛を求めたりしないで、彼女達は彼女達の中で完璧に自己完結している、本当に美しい世界。そして私はここにある種の女子校的世界を見たのです。

その次のリリースはChu♡ですが、この曲も現実のリアルな恋愛を歌ったものではなく、あくまで恋に恋する少女たちの歌なんですよね。女子校的閉鎖空間で、少しだけ幼くてダサい洋服を着て(私はこの曲の衣装は本当に意図的だと思うのですが、少し外してますよね。なんていうか、アメリカのハイスクールムービーのクラスの少しだけイケてない女の子たちを彷彿とさせる)「この世にはどうやら恋愛というものがあるらしい、キスって最高なものらしい、あ〜そんな知らない世界を早く見てみたい!」みたいなノリ。重要なのは、いわゆる男性から見た、まだ恋愛をしたことがない少女(透明感しかない処女性)の押し出しではなく、あくまで等身大のまだ恋をしたことがない垢抜けない女の子たちの心であること。まじで女子校である。

 

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で、私が本当に死ぬほど好きなK-POPナンバーから絶対に外せないヌエビオなわけですが、本当に女子校のピークという感じがする。一応、恋愛ソングの体裁にはなっているのですが、なぜか「ちょっと聞いてよ、オンニ」みたいなとこから話が始まってるんですよね。日本語和訳Mネットから拝借してます。

どうしたらいいの、オンニ 私の話を聞いて

私は彼のonly? わからない

突拍子ないのいつも 私をからかう

私が本当にかわいいの? そうなんだって

 

独創的なあだ名をつける 例えばクンディクンディ

気に入って手を高くあげる 本当に私はNUイェピオ

 

Mysteric Mysteric

まだ私にはわからない

基本基本の恋の公式

人々の別れの公式 

ストーリー的には、まだ恋愛とかそんなにしたことない中学生か高校生くらいの女の子が、最近仲の良い男の子ができたが、完全にマウント取られてる。変なあだ名とかでからかわれたりとかしてる感じで、距離は近い気がするのだけど、相手が自分のことを好きなのかも分からないし、これからどうしたらいいのかも分からない。だからそれを仲のいい女の先輩に相談してる、みたいな話なんですよね。

私はこの曲を聞いたときに「えっ、いや、ファン層どこなの!?」と最初に思いました。ゴリゴリの衣装で「ちょっとオンニ、きいてよ〜」って、これもう全然男の介在する余地がない世界では?という。男性キャラクターは登場するのだけれど、どちらかと言うと女子同士の関係を強化するための架空のキャラクターに仕立て上げられている感じがするくらい。結局、これも女子校の中の話なのでした。

 

この後、ピノキオ・エレクトリックショックなどで人気が爆発していくのですが、この頃はエプだけではなく、ケーポ界全体(というかそれを牽引していたSM)が電子音・繰り返し・中毒性みたいなものを追い求めており、特に電子音の席巻ぶりが著しく、エモ音・メッセージ性・物語派閥の私としては正直「最近のケーポの音楽つまらんな」と思っていました。歌詞とかも繰り返しが多いせいで、伝えられる情報量が少なく、「要約するとサランヘヨしか言ってない説」などと思っていた。なので、ライブなどで聴く分にはすごく好きだけれど、コンセプト的に見るものはそんなにないと感じています。今も、このへんの時期のヒット曲にはそんなに思い入れのある曲がない。おかげでCNBLUE、ZEA、TEENTOP、ピニなどを聴きまくれて結果的には良かったのですが。

 

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しかし邦題「初めての親知らず」で私は再びドカーーーーーーーーンとやられてしまいました。若干の電子音というか中毒音・繰り返し性は残っているものの、これは本当にメタファーがまじで最高。ずっと妄想?の恋愛?や、関係性まで踏み込まない片思いにとどまってきたエプが、ついについに初恋をした!女子校の民、世界を知る!しかし、そのときに自分の初恋を何に例えるかって、親知らずに例えるんですよね!?!?そんなエモいことある??

親知らずと初恋???は???という感じがありますが、彼女たちが言うには「親知らずは知らないうちに育って、ある日突然、歯茎を貫通して現れる。すごく痛くて、苦しくて、眠れない、経験してみないと分からない、私にとっての初めての経験。そのうち親知らずを抜いてしまうかもしれないけど、それがあった場所はぽっかりと私の中にずっと残っていく」的な話なんですよね。

親知らずは恋愛相手のことでもあり、初恋そのもののメタファーになっているようです。知らないうちにぐっと私の心を貫通して現れて、痛かったり苦しかったり眠れなかったりするし、いつかこの恋が終わっても、私の中にはずっとこの恋のことは残っていくんだろうなあ〜みたいなことを、初恋に際して考えているんですよね? 本当にエモい。詩的。すごすぎる。ここまで来ると、もはや恋愛相手は男なのか?異性愛秩序を前提としていいのか?という疑問が浮かんでくるくらい。結局、現実に恋に落ちてみたものの、どこか夜な夜な日記帳に書き留めるポエムのような受け止め方をしてしまうf(x)は最高に女子校メンタルだな〜などと思って、やはりf(x)は、モテなどという要素を一度隅に置いて、本当に女の子の共感のために歌ってくれているように私は感じていたのでした。

というか、ソルリめっちゃ可愛いですね。このMVは特に顕著だけれど、ソルリは基本的には笑っていて、その笑顔はくしゃっとしていてすごく幼いんだけれど、パフォーマンスのある瞬間ハッとするような妖艶な色気を漂わせることができて、その切り替え・振れ幅がまじで尋常ではなくてすごいんだァ〜〜目力が何もかもを超越していってる。本当はもっとアイドルソルリが見たかったァ〜〜〜そして女の子にこんなこと言うのはきっと最初で最後だろう。

 

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で、レッドライトをまで行ったときは今までとは全く違った方向性でぶっ倒れてしまった。個性を求められまくっているのは知っていたが、SMの優等生アイドル達にそれはそこそこしんどそうで可哀想だなと思う気持ちもあったので、ついにここまで行くの!?という衝撃とともに、案の定ソルリが限界を迎えてしまった。もともとかなり大変な子ではあったみたいですが。

 

先にも書いた通り、結構ソルリペンだった私は、ソルリがいなくなってからのエプには急速に興味を失ってしまったのですが、彼女達の見せてくれたあくまで女の子から見た等身大の少女性、そしてそれだけを武器にケーポ界を突き進んでいった姿には、とてつもない美しさを感じます。ここまでこの部分を徹底してやってくれたヨドルは他に知りません。まあ私のヨドルアンテナが死ぬほど低いだけかもしれませんが。他にいたら教えてください。

絶妙なバランス感覚で突き進むレッベルちゃん達を見るときに、私はふと、その土台になっていながら、同時にエッジが立ちすぎているということで駆逐されたであろうエプの女子校的感性を懐かしく思うのでした。