きらめきおばけ

隣国のきらめく男子たちの虚像を解釈する二次創作

東方神起未発表曲『別れよ』音源公開に寄せて

ずっと気持ちの整理がついていなかったのですが、そろそろ何度も聴きすぎて、心を落ち着けて聴けるようになっていたので、まとまった文章を書こうかな〜なんて。あの頃をひとつひとつ整理していく作業も、少しずつやっていけたらいいのにと思っています。

 

2018年5月1日、5人時代の東方神起の未発表曲のひとつである(ひとつであると書くのは、おそらくあと数曲、未発表曲があるから)『別れよ』の音源がSNS上で公開されました(現在は削除済み)。

この曲はジェジュン主演の韓国映画『天国への郵便配達人』のエンディングテーマの曲でした。そして、おそらく5人の東方神起のゴタゴタのせいで権利関係がうまくいかずに、OSTにも収録されず、その後どこにも収録されず、まさに未発表のまま眠っていた曲でした。

私はこの曲を、確かに劇場で聴きました。そしてあまりの美しさと聴けるはずがないと、もう一生聴けないのかもしれないと思っていた5人の歌声に号泣した記憶だけがあり、とにかく悲しくて美しくて泣いたはずだった。でも、あの頃は一日一日、状況が変わっていたので、何が何だかよく覚えていないのですね(もう8年くらいは経っているし…)。5人で復活する可能性が見えたと思ったら、全くダメになったり、日本活動だけなら大丈夫という噂が流れたり、一部のメンバーが猛烈なバッシングにあっていたり、その原因が他のメンバーなのではないかと噂が立ったり。とにかく様々な噂が流れ、情報は錯綜し、それを追いかけ続けて疲れ果てていた。この映画の公開、そしてこの曲を聴いたことがその流れの一つだったのは確かです。なので、日付などを調べて、ちょこちょこ時系列を整理してみようと思いました。

 

『天国への郵便配達人』の日本劇場公開は、調べたところ2010年の5月29日でした。あの、日本活動休止が発表された翌月です。まあ私はおそらく6月くらいに劇場に観に行ったのでしょう。私はジェジュンのことが本当の本当に心の底から大好きだったので、その頃はありとあらゆる露出をくまなく追いかける懸命で熱心なトンペンでした。

そして、北川悦吏子先生脚本、上野樹里瑛太主演のテレビドラマ『素直になれなくて』もちょうどこの時期に放送されていました。確か、春始まりのドラマだったので、このことはとてもよく覚えています。放送後、一度もみかえしてはいないけれど、内容やあの時のジェジュンの演技、喋り方までとてもよく覚えている(もしかしたらスナナレのクリアファイルを持っていて、それをしばらく使っていたからかもしれないけれど)。ジェジュン上野樹里に想いを寄せる韓国人役で、ちょっと冴えない営業マン役でした。それもそのはず、いくらジェジュンが日本語が上手だと言えど、日本人に混じって日本語で演技した時に違和感がないはずがないのです。ちょっと朴訥とした喋り方になってしまうのは仕方がない。だから、冴えない役を与えられたんだ、といった雰囲気なのでした。

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ドラマ自体をどうこう言うつもりはありませんが、当時の私にとってのジェジュン、私にとってのヒーローはあまりに完璧で、日本人の中で冴えない韓国人役をやるのは、少し違うな、と熱心なファンとしては思っていました。ジェジュンのあまりに綺麗で冷たい雰囲気を醸す顔がオドオドしていたり、あの鈴のような美しい声がどもったりするところは、正直に言ってあまりに不似合いでした。この頃のジェジュンのビジュアルは、もちろん今が美しくないとは言わないけれども、ある種の特別感がありました。例えば、Stand by UでMステに出れば、観た人がほぼ確実に「このセンターの子、誰?」と言ってしまうような。あまりに美しく、少し動くだけで皆がハッとするようなオーラがあって、そんな時にもちろん懸命に冴えない韓国人役をやっていたのだけれど、そのオーラは不慣れな日本の演技では隠し切れていませんでした。

そんなタイミングで、おそらく私は『天国への郵便配達人』を観に行ったのだと思います。この映画、韓国公開が2009年9月だったので、先に韓国では公開されていて、綺麗な風景と美しいジェジュンのビジュアルがどんどん上がってきていたので、絶対に観に行くと誓っていました。そして、劇場で観た、韓国語で演技するジェジュンはあまりに素晴らしかった。

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ハンヒョジュちゃんがこれまた森ガール的な感じで可愛いのだけれども、ジェジュンは人間なんだかなんなんだか分からない男の子の役で(間違ってたらすみません)綺麗な田舎?の風景の中で、真っ白な肌に黒髪が映えて、唇だけがパッと血のように赤く、そして衣装はすべて袖が長く、袖で半分隠れた手で女の子に触れる様子は、とんでもなく素敵だった。男の人として素敵なのだというよりも、性別のよくわからない、同じ地平に立つ人間というものとはちょっと違うレベルの何か、中性的といえば中性的なのかもしれない、そういう摩訶不思議な魅力があった(こういう時に気づくのだけれども、私は中性的な魅力を持つ男に心底弱く、揺さぶられ続けた10代だったのだなあ…)。低い声でぼそぼそと喋る姿、捉えどころのないキャラクター、次の瞬間いなくなってしまうような存在の不安定さ、すべてがジェジュンにぴったりで、私は北川先生に再び深く感謝をしたのでした…。

 

そして、物語のエンドロールからクライマックスにかけて、その曲は流れたと思います。

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聴くだけで悲しく、寂しい気持ちになる冒頭ですね。映画の雰囲気にはぴったりと合う気がしますけれど。そして、歌い出しはジェジュン。いつも通りと言ったらクオリティーを求め過ぎていて申し訳ないのだけれど、いつも通りの東方神起のバラード曲のAメロのジェジュンです。サビで爆発させるため、低く、静かに、抑えたジェジュンの声。そのあとに響くのは優しいユチョンの声。ジェジュンとユチョンの声は、ともに包み込むような優しさと曖昧な響きがあるので、ジェジュン(特に低音)→ユチョンというパートの受け渡しは鉄板だなと感じます。ユニットやったのも分かるよ。

サビに静かに入ってくるジュンスの歌声は自然で、でも力強くて聴くだけで安心する。そのあと引き継がれるチャンミンは、高音から低音の下がる時の声が独特で、これを聴くとああ5人時代のマンネのチャンミンだなあ…と懐かしい気持ちにさせられる。今はもっと上手になってしまって、この癖が薄くなってしまったので。この2人の声はどちらかと言うと圧が強く、攻めた印象が出るのでサビで一度気持ちがぐっと盛り上がります。

でも、その後のBメロは再び抑えたジュンスの声。そして、ジュンスからユノに引き継がれます。ユノの声は本当に優しくて、どこか少し明るくて、ジュンスのぐっと引き締まった低音から気持ちがふんわりと和らぎます。そして、サビへのジョイントを担うのは再びジェジュン。Aメロ冒頭の抑えた声ではなく、こぶしを聴かせてサビへの盛り上がりをきちんと作る、メインボーカルの圧倒的貫禄。

そこから重要な2番サビを引き継ぐのはジュンス。なんだかんだで韓国曲では、曲の大事な箇所は必ずジュンスジェジュンが割り振りされるのです。その後も1番と同様、チャンミンが引き継ぐ。この曲はサビは強い声で押しきろうという姿勢が見えます。と、思ったら1番と異なり、もう一度ジュンスにパートが戻っていく。と、思ったらもう一度チャンミン。強い声の応酬が聴いていてとても心地よい。このへん、パフォーマンスが一度でいいから見てみたかったなあ…と思います。最後、大サビまでの繋ぎは再びジェジュン。ここがまた、圧巻のメインボーカルぶり。この曲はまあ、ジェジュンが主役の曲ではありますが、それにしてもこの繋ぎは心が震える。

そして、東方神起らしく5人の声が次から次へと重なり、襲ってくる大サビ。私は確か、この大サビを聴いて劇場でボロボロに泣いたのだった。主旋律には複雑なハモりがあり、その上バックには圧倒的なコーラス。さらにコーラスかと思ったらメロディに、メロディかと思ったら飾り語にと、複雑に5人の声が移動して全く捉えられない。誰がメインなのかも分からない、このあまりに複雑なコーラス、重なり合う声、美しいハモり、これこそが私の愛した東方神起だと確信する。私が愛した東方神起、一人として欠けたら成り立たない音楽、全く異なる魅力を持つ5人だからこそできる圧倒的なパフォーマンス。

 

大好きだった、本当に大切だった東方神起が聴いたことのない音楽で蘇った。それはまるで、5人の新曲を聴いたかのような気分でした。もちろん、今も東方神起の1集〜4集はよく聴きます。というか、私が一番よく聴くK-POPは、未だ東方神起の初期アルバム達です。それらのアルバムは、もう曲順から歌割りまで染み付いてしまっていて、聴いてもまるで身体の一部になってしまっているような、そんな感覚です。でも、これは違った。この曲は、最後に劇場で聴いて、あまりの素晴らしさに涙を流して以来、8年間一度も聴くことのできなかった曲でした。聴けば懐かしい気もしたけれども、ほぼ初聴に近い曲。

聴けば嬉しいかと思ったけれども、聴いたら後悔した。あまりにすべてが鮮明で、普段は忘れている5人への気持ちが蘇って、とても苦しくなってしまったので。

 

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それはマキシマムの5人verを初めて聴いたときと同じだった。確か、マキシマムの5人verは、サセンがユチョンの部屋を盗撮していた動画で、音漏れしていたものが初出だったはずでした。普段ならサセンが絶対に流出させないユチョンのプライベート動画(ラフな格好で洗濯とか干してた気がする)だけれども、5人の声だということで流出したのだった。そしてその後見つかったこの練習室動画。この2人の代表曲のひとつで、圧倒的に響くジェジュン・ユチョン・ジュンスの声。その声が響く中で練習していたふたりは、どれだけ苦しかっただろうか。自分がセンターに立って、歌わなきゃと思っているパートの時に、響いているのは3人の声なのだ。同時に、あったかもしれない可能性がチラついて、そんなことも嫌になる。そうだ、幻の5集騒動で感じたのは、嬉しいよりも苦しいだった。時間が経ったので、忘れてしまっていた。

 

5人に戻ってほしいだなんて、私は思っていません。それぞれがそれぞれの場所で幸せに過ごしていればそれでいいし、互いの人生が交わらないならもうそれでいい。たまたま同じ事務所にいて、たまたま同じグループに入れられて、たまたま数年間、私に完璧な関係性を見せてくれていただけで、実はその縛りがなくなったらもう交わらない人生だった、それならそれでいいのです。

それでも私は、どこかであったかもしれない可能性を思い、例えばライブで5人が横並びで、いつものあの並びで、この曲を歌ったかもしれないこと、目を見合わせながらこの圧倒的なハモりを作ったかもしれないこと。そういうことに想いを馳せてしまうのです。そして、胸が苦しくなるので、静かにこのことをまた忘れ、音楽だけをありがたく受け取り、耳を馴らしていくのです。